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福岡高等裁判所 昭和52年(ネ)241号 判決 1977年11月08日

控訴人 福岡市同和奨学振興会

右代表者会長 戸田成一

右訴訟代理人弁護士 内田松太

同 和智龍一

同 稲澤智多夫

被控訴人 甲野花子

右法定代理人親権者父 甲野一郎

同母 甲野良子

<ほか三八名>

右原告ら訴訟代理人弁護士 小泉幸雄

同 本多俊之

同 諫山博

同 古原進

同 林健一郎

同 中村照美

同 小島肇

同 上田国広

同 岩城邦治

同 井手豊継

同 内田省司

同 津田聡夫

同 林田賢一

同 辻本育子

同 辻本章

同 木梨芳繁

同 立山秀彦

同 岩城和代

同 三浦諶

同 原正己

同 坂本駿一

同 前田豊

同 馬奈木昭雄

同 江上武幸

主文

一  本件控訴は、いずれも之を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「一、原判決を取消す。二、被控訴人らの請求は、いずれも之を棄却する。三、訴訟費用は、第一、二審共被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上及び法律上の主張は、控訴代理人において、進学奨励金の継続申請の場合においても、申請者の控訴人に対する具体的な給付請求権は、福岡市同和奨学振興会進学奨励金入学支度金給付規程第二条第一号、第二号後段、第三号、第四号及び第九条第三項の第一号ないし第四号が控訴人選考委員会において検討された上給付決定があることにより発生するものであり、継続申請又はその受理により当然に発生するものではないから、昭和五一年四月から昭和五二年三月までの進学奨励金につき、控訴人選考委員会の給付決定がない本件にあっては、控訴人は被控訴人らに対し右の進学奨励金の支払義務を負担しないというべきである、と述べた外は、原判決事実摘示記載のとおりであるから、ここに之を引用する。

《証拠関係省略》

理由

当裁判所も、被控訴人らの本訴各請求は、原判決認容の限度において正当として之を認容し、その余は失当として之を棄却すべきものと判断するが、その理由は、左に付加する外は、原判決理由説示と同一であるから、こゝに之を引用する。

控訴人は、控訴人の被控訴人らに対する具体的な進学奨励金の給付義務は、控訴人選考委員会の給付決定によって始めて発生し、単に被控訴人らの継続申請又はその受理により当然に発生するものではない旨主張するので按ずるに、控訴人が被控訴人らに給付すべき進学奨励金は、同和対策事業特別措置法を受けた福岡市同和奨学振興会進学奨励金入学支度金給付規程に基くものであるが、右の法の精神と規程の運用のあるべき姿を合理的に考察すれば、その性質は元来、同規程第二条所定の受給資格者の給付申請がある以上、給付を不相当とする特段の事由がない限り、控訴人選考委員会の決定をまつまでもなく、権利義務が具体的に発生し、控訴人において支給を拒みえないことが、既にして予定されたものと解するが相当であるところからすれば、控訴人のこの点の主張は所詮採用の限りではない。

よって原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから之を棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高石博良 裁判官 鍋山健 原田和徳)

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